言葉の持つ力
こんにちは、櫻井です。
私たち松本青年会議所のメンバーは、よく人前で話す機会があります。
限られた時間で、適切な言葉・構成で、自信を持って上手に伝えられる人も、そうではない人も当然いますが、青年会議所ではそういった機会は成長のための修練として捉えていますし、緊張したり、噛んでしまったり、言い直したり、伝えたいことを忘れてしまったりしたとしても問題ないと私は考えています。
むしろそうした機会にチャレンジしない方が損失であると考えます。
元来、皆それぞれ考え方や意見は本来もっているわけで、
伝え方が拙くても、個人の評価が上がれども、下がる要素では無いと
私は思います。
なぜならJCI綱領でも下記のように謳われており、
それも、とても大切な個性の一部だと私は考えているからです
JCI綱領一部抜粋
「That earth’s great treasure lies in human personality」
「人間の個性はこの世の至宝である」と。
ですが、自分の考えや意見、伝えたい事を上手く表現できると
自分という存在をより多くの人に知ってもらえる機会になりますし、
また人を先導する立場の人は、大きな影響力や士気を高めることにも
繋がります。
そこで、最近観た2つの映画をご紹介しながらスピーチの持つ力と
そういった機会の大切さについてお話ししたいと思います。
ご紹介する映画は『英国王のスピーチ』と『ウィンストン・チャーチル』です。
2つの映画は同じ時代をイギリス国王ジョージ6世とチャーチルそれぞれの視点から描かれています。1939年ドイツがポーランドに侵攻し第二次世界大戦に突入していく世界情勢の中、イギリス国王に即位するジョージ6世と1940年に首相に着任しドイツナチ党ヒトラー独裁政権へのイギリスの宥和政策に反対したチャーチルの2人です。
この2人は強く連携し、5年間に及ぶ戦争期間中、スピーチ(演説)によって国民の士気を支え続けます。
『英国王のスピーチ』は吃音に悩む英国王ジョージ6世が周囲の力を借りながら吃音を克服し、国民に愛される王になるまでを描く実話に基づくストーリー。
(C) 2010 See-Saw Films. All rights reserved.
『ウィンストン・チャーチル』は第二次世界大戦初期のイギリスがもっとも窮地に陥った時期、演説を通して、悪に屈しない勇気とイギリス国民が共有すべき崇高な理念を巧みな表現と言葉の構成で伝え、国民が一致団結する士気を高めていく様を描いた実話に基づくストーリーです。
(C)2017 Focus Features LLC.All Rights Reserved
1936年に国王に即位したジョージ6世ですが、幼少の頃から悩まされていた吃音症に起因するおどおどとした様子と、生来の内気さから、兄エドワードほどには目立った存在とは言えませんでした。兄エドワードが辞退したことから、弟であるジョージ6世が国王を即位し、ドイツヒトラーの台頭から国家の存亡の危機に直面し、国家のため、国民のために自らを鼓舞し、自らの役割に正面から立ち向かい吃音症を克服していく様は、演説の素晴らしさもありますが、彼の自らに課せられた役割に真摯に向き合う責任感の強さと、困難に立ち向かう姿勢により、とても勇気を与えてくれます。
対照的に、チャーチルは演説に詩や書物をよく引用し、
自らの言葉に叙述的な意味を持たせ、聞く者の心に訴える上手さをもつ、
スピーチ巧者です。
(例)
英国の政治家であり、歴史家であり、詩人でもある人が書いた有名な詩(「橋の上のホラティウス」)をドイツに立ち向かうべき英国の立場を表現するために引用したことがあります。下記原文一部。
「守り手であるホラティウスは言った。
“地上のあらゆる人間に死は遅かれ早かれ訪れる
ならば強敵に立ち向かう以上に尊い死があろうか“
“先祖の位牌のために”
“神々の殿堂のために” 」
風貌も含め、アクの強い性格で毀誉褒貶の激しい性格であったチャーチルと脳の発達障害を持ち13歳で亡くなった弟ジョニーを労わり晩年まで弟の不憫さに心を痛める優しいジョージ6世の姿は対照的と言えます。
しかし、2人ともに、言葉の力を駆使し、逆境に屈しない抵抗精神で国民から広く愛される彼らは、その色は違えども、強力なリーダーシップ能力を有していたと考えられます。
言葉の持つ力はときに歴史を動かすほどの力を持っているのです。
少し話が大きくなりすぎましたが、私たち松本青年会議所には様々な立場の人たちがいます。ですが共通する点として、皆、何かを先導すべき立場であるということです。それは社会人であれば青年会議所に限らずとも言えます。
私たちの暮らすこの社会のカテゴリーである会社やチーム、家族などの様々な場は、それらを内包する社会を含め、いずれ次の世代に引き継いでいかなければならないものです。
今より少しでも明るく豊かな社会にしていくには、一人一人がそれぞれの個性と価値観を大切にし、その理念や目的をしっかりと次の世代に伝えていく事が大切だと私は考えます。
そのためにも、日々のちょっとした人に向けて話をする機会を
「めんどくさいな」、「緊張して嫌だな」とは思わず、
「失敗してもいいから頑張ってみよう」と思ってチャレンジしてみる勇気を、
また、人の話を聞く際には
「この人のこういうところ真似してみよう」とか、「こういう表現いいな」など、自分が話すときの参考にしてみるなど、意識を変えて聞いてみる姿勢をもつことで、自分のスピーチに良い変化もあると思います。
とっても長くなりましたが、最後も映画で締めます。
第二次世界大戦を描いた映画は数多いのですが、
おすすめをさらに2つ
「ダンケルク」と「プライベートライアン」です。
「ダンケルク」はドイツのフランス侵攻によって追い詰められた英仏軍(36万人)をイギリス本土に向けて脱出させる「ダンケルクの戦い」を描いたものです。チャーチルの苦悩と英断によって決めた「ダイナモ作戦」が兵士の視点で描かれています。
また、「プライベートライアン」は、チャーチルの活躍によってアメリカが第二次大戦に参戦した後の話です。直接的な関係はありませんが、ヨーロッパにおける戦争が世界に飛び火した結果を垣間見れます。
どちらもジョージ6世やチャーチルは出てきませんが、
ノンフィクション物をみるときには複数の映画を包括的に俯瞰することで、
また印象が変わってきますし、興味深く映画を観ることができるので、
そういう選択で映画を選ぶのもおすすめです。
それでは、また。